パーフェクトワールド

過激よりかは真剣になれる話

KISSで連載されている作品の多くは女性が読める作品が掲載されている。東京タラレバ娘もその1つですが、内容が少しばかり痛烈すぎるためオススメできるかと言えば人を選ぶので、あまり積極的には勧められない作品だ。ではもう少し分かりやすい、もしかしたらあるかもしれないというリアルさで控え目なものはないかという作品とならば、1つある。

こちらも誌面で連載されてから、コミックスと共に電子書籍で一時期話題を振りまいた作品『パーフェクトワールド』を紹介したい。筆者も電子書籍の広告で見かけてから気になって見てみたが、正直こうした場面に出くわす可能性は十二分にある、そう思える作品だったからだ。東京タラレバ娘とは違って、恋する男女がテーマとなっていますが、その間に立ちふさがる1つのキーワードは、

『恋人が障害を負っても愛し続けられますか?』

というものだ。

障害者というのも一口に言えませんが、この作品の場合だと主人公がかつて同級生だった男子と偶然再会してみると、車いすでの生活を余儀なくされていたという内容になっています。そんなパーフェクトワールド、こちらもまずは簡単に概要から見てみよう。

作品概要

あらすじ

設計事務所に勤めている川奈つぐみが取引会社との飲み会にて、高校時代に初恋相手だった鮎川樹と偶然再会を果たす。それぞれが夢へと邁進している中で、学生時代とは違った大人の男性になった鮎川につぐみは初恋を思い出すが、樹は過去の事故によって下半身不随となって車椅子生活を余儀なくされていた。つぐみの知る樹はバスケットボールが上手く、社交性に富んだ誰からも好かれる人間だった。

障害を負った樹は今後、誰とも恋をすることはないとつぐみに言う。けれどつぐみの中でそれでも樹に対する想いが抑えられなくなってしまう。ただ彼女はまだ知らなかった、障害を背負うことになった人間との生活がどれほど辛く、そして覚悟を伴うものかを。

有り得る話

この物語で一番のキーワードとも言えるのが、障害を持つ人ときちんと向き合えるのかという点だ。作中の樹の場合、先天的なものではなく事故による後天的によって負うことになってしまったもの。そのため樹は学生時代は健常者で、運動神経抜群でバスケットボールを楽しむごく普通の高校生として過ごしていた。いつか自分で設計した家を建てる、一級建築士という資格も獲得し、その夢を獲得していた。

つぐみもなんとか自分の夢に向かっていたが、樹が障害者になってしまった現実は彼女にも衝撃を与える。かつて恋心を抱いていた男性が車椅子の生活をしている姿は、見ていて辛いものがあるだろう。男性目線でも、友人がもしそうなっていたらと思ったら、どう声をかけてあげれば良いのかがわからなくなる人もいるはず。触れてはいけない話題と思いつつ、気を使いすぎるのも良くないという思いに駆られる人もいるはずだ。

これらの状況はフィクションだと言い切れるものではない、障害でなくても重い病気になっていたり、精神的なものに苛まれているといった現実問題もよくある。そうなってしまった友人にどう接するべきか分からず、戸惑っている人も多いはずだ。社会派とも言えるこの描写はあながち間違いばかりではない。

障害というハンデ

つぐみの再燃する恋にも注目するところですが、この作品で一番の苦悩を抱くのは他でもない、樹だ。彼にすれば元は自由に動ける足を持ち、車椅子などとは縁遠い生活を送っていたバスケット少年だった。そんな彼が一夜にして歩くことが出来なくなってしまった身体になり、仕事は辛うじてできるものの単身での生活すら営むことすら通常とは桁違いの苦労を要するまでになってしまった。あれだけ好きだったバスケットボールが出来なくなってしまった、それだけでも事故当時の彼は絶望するに十分だった。

ただだからといって彼自身が生きることを諦めず、逆に自分のような障害を負った人でも不自由しない暮らしが出来る家を作るという、そんな努力を志すまでになっている点が良い点だと感じられる。ハンデを負ってしまったからといって悲嘆することなく、自分にできることをする。これでイケメンと来れば、惚れ直さない方が難しいだろう。

恋仲になっても

物語が展開していくことで、つぐみと樹はやがてその想いを結んで恋人になる。けれどつぐみの障害を持つ人間に対しての接し方が分かっていなかったこと、現実問題として今後も付き合い続けて、最終的に結婚できるかとなった際、出てくる問題を乗り越えられるかといった様々な物が浮かび上がってきます。

それらは現実に私達にも起こりうる状況だと考えたら、一度は考えておきたい問題といえる。そしてこの話から浮かんでくる、介護というものがどれほど過酷なのかを知ることにもなる。

弩級の作品を生み出し続ける漫画雑誌KISSから生まれた名作たち