見る人を選ぶ

痛快を通り越した過激な内容

話題性は確かにある、実際にヒモザイルと同等とも言えるほどの内容と言えるこちらの作品、同年代の女性で独身の人にしたら心が砕けそうになるとまで言わしめるほどだ。それだけ共感できることの現れなのかもしれない、作者がそうしたリアルな内容を持ちだしてのことだと言えなくもない。筆者も話題に乗じて作品そのものを見てみたが、中傷めいたことをいうつもりはないにしても、見て面白いという印象は感じなかった。

そもそも果たしてそう感じて生きている人がほとんどなのかという疑問が出てきたほど。作者の身の回りにそういう人間が集まっているのかもしれませんが、全ての女性に共通しているわけではないでしょう。ですが年月を重ねた女性という視点で見ると、気になる点があるとするなら『作中の主人公たちが異様に頑固』という点か。それは所々で感じる節があるが、よくある話と思えばあるのかもしれません。

ですが作品全体を通すと、今後男女共により高い人気をもたらすかといえばそういう作品に化ける可能性は少ないのかもしれません。

作中における"幸せ"とは何か

とりわけ筆者が読んでいて思ったのが、作中にて倫子たち3人が追い求める幸せの形については疑問を感じるところがある。彼女たちにとっての幸せとは、最終的に結婚することだと述べている。そんな彼女たちが当然のように上げている結婚相手にしたい男性の条件とは、

高学歴・高収入

イケメンであること

性格も良い

というものだ。理想という見方で見れば良いのかもしれません、ですが現実的に物を考えてそればかりを追い求めていれば、いつか結婚できると思っている人は現実的に少ないだろう。世界に対して理想を追従し続けることは悪いことではない。夢を追うことで活力は湧いてこそするかもしれないが、だからといって追い求めすぎたところでそれが叶うはずもない。

彼女たちもそれが分かっている、けれど認めたくないからタラレバとあぁすれば良かったと過去を回想する話題にばかり触れているのだ。ただそれぞれが経済的な面で安定しているのに、そのことをいつまでも自覚できていないのはどうかという点は些か疑問が残るところだ。生きていればいつか出くわす壁だが、彼女たちが設定している最終ゴールとも言えるのが‘結婚'にしているのも、どうなのか。

結婚に対しての理想

今の御時世で、『結婚=素晴らしい』といったお花畑な思考を考える人がいるのでしょうか。いつかこうしてみたいと思っても、出来ることは限られていると直面する事実に出くわすこととなる。その点をいつまでも目をそらし続け、いつか自分の目の前には自分が思い描いた人が現れると思い込んでいる描写がある。

それを一番に感じたのが、香が回転寿司で食事をしている時のことだ。レーン上に乗せられた寿司が流れてくるように、自分のところにもオススメの男性が来ればいいのにといった妄想を抱くのだ。大半が彼女が理想とする男性ばかりだが、共通しているのが『高収入』であることが大前提になっている。けれど結局彼女自身が動かないため、男性との出会いもなければ恋愛すら数年間していない始末だという。

おまけに作中でかつての元カレでバンドマンとして人気を博しつつあった男とセフレという関係になるという、どうしてその道しかなかったのかと、そんな展開になっている。彼女たちにすれば結婚はゴール、恋人がいてこそ楽しいと思い込んでいる点も、どうなのだろう。

付き合い始めても

また結婚をするため、倫子も作中で1人の男性と付き合い始めます。しかし一緒の時間を過ごす事に対して自分の興味が無い話には全く関心を示さず、こんな時間を過ごすくらいなら香たちと過ごしている方が楽しいと思ってしまうのだ。人間とは妥協を覚える生き物だ、それが出来ずに角を立てていてはいつかは摩擦が生じて男女関係など続くはずもない。結婚にしてもそうだ、それこそ一生涯を1人の男性と共に過ごすとなったら、嫌な部分も承知の上で付き合っていかないといけないのに、それが出来ないくせに恋愛しようともがく姿に、共感どころか疑問を覚える人もいる。

彼女たちはどうして自分がモテないのかと分かっていないが、少なくとも自分勝手な性格をした女性なのは見ているだけで取れる。そんな女性がモテるはずないのは自明の理だ。

面白いかどうかとなったら

作品に対しての意見や感想を集めてみると、東村アキコさんの作品は現代の生き方を克明に描いている、その点は間違いない。だが内容が評価されると、これは本当に面白いと言える作品かといえば、大人が読むものだ。子供がこんなものを読んで誤解を招くこともある。それこそヒモザイルなどというタイトルで、ヒモ男を生産すればいいなどといった話がウケるわけもない。

東京タラレバ娘、一度読んでみていただければ分かると思いますが、内容を好きか嫌いかと判断する上で人を選ぶのだけは間違いない作品だ。

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